スキンケアの基本「洗顔」について
書店の店頭に、カリスマ美容家と言われている方の「顔を洗うのをおやめなさい!」という衝撃的なタイトルの本が並べてありました。昔から、洗顔は朝起きたら歯磨きとともに必ず行うように家庭でも学校でも子供のころから教えられ習慣となっていましたし、今でもその習慣は変わらないものと思っていたので大変驚きました。そう言えば筆者の知っている大教授は、オフレコで「顔なんてめったに洗わない。石鹸でゴシゴシ洗う方が肌に悪い。洗わなくたってこの歳まで困ったことはない」と話しておられたことがあります。一方で、化粧品メーカーの美容部員たちはマニュアルのパンフレットを示しながら、懇切丁寧に美容の常識と言わんばかりに「小まめで丁寧なダブル洗顔を毎日しっかりするように」と指導しています。
一口に洗顔といっても、化粧をしている女性とほとんど化粧しない男性でその洗顔方法や考えは当然異なるでしょうし、年齢・肌質・目的・季節・環境・洗顔アイテム・洗顔料などの様々な要因で洗顔方法は異なって然るべきものです。
さて、ファンデーションのような化粧品を、洗顔料を使わずに洗浄できたら理想です。そもそも、ファンデーション類や日焼け止め製品は、その目的からして塗った状態を長時間維持し、皮膚から簡単に取れません。そのため落ちにくいメイク製品を落とすにはそれに適した洗顔料が必要で、クレンジング剤と呼ばれています。ちなみにクレンジング以外の洗顔料を洗顔剤と呼び、洗顔料はクレンジング剤と洗顔剤の二つに分かれます。
さて、カリスマ美容師の本をよく見ると、ダブル洗顔のクレンジングによる洗顔は必要で、二度目の洗顔は必要ないものの、ぬるま湯で十分に顔を洗ってくださいというものでした。ではクレンジング以外の洗顔剤は必要ないか? クレンジング剤は一般的には洗顔剤を使わないと落ちないことが多いので、やはり洗顔剤は必要と考えます。当然クレンジングを行わなければ洗顔剤は必要になります。洗顔剤を選ぶコツは、肌質を問わず、泡立ちがスピーディで、泡の質も泡ギレもよいものを選ぶことです。そして、洗顔後につっぱりやカサつきがなく、肌に潤いが残るものが理想です。できれば、その日その日で肌質も異なるものですから、いくつかの洗顔剤を持っていて、その日の化粧や肌にあった洗顔剤を使い分けるのがよいです。また、最近ではクレンジングと洗顔が同時にできるアイテムが出てきましたので、それらを試してみるのもよいです。皮膚をたえず清潔に保つことはスキンケアの基本であり、洗顔は大切な行為です。ただし、ゴシゴシ洗うとシミの元になるので注意が必要です。皮膚には新陳代謝があって毎日皮膚表面の角層は薄く剥がれているのでゴシゴシ洗わなくても化粧品の汚れはある程度取れるものです。
はじめに紹介した大先生もその後「朝に石鹸なんか使って顔なんてめったに洗わない。洗わなくたってこの歳まで困ったことはない。夜、風呂に入ったとき体や頭を洗うときに顔も洗っているから」と言われたような気がします。
文:漆畑 修(Dr.ウル)
宇野皮膚科医院 院長。東邦大学客員教授。皮膚科専門医、温泉療法医、サプリメントアドバイザー。The Best Doctors in Japan (2010―2017)。専門は皮膚科学、特にヘルペス感染症、アレルギー性皮膚疾患、美容皮膚科学、臨床免疫学、臨床栄養学。