お風呂で全身エステ ~夏のおふろ~
夏は、皮膚トラブルが最も多い季節です。
汗の刺激による「あせも」や、あせもに雑菌が付着するとできる「とびひ」、脂漏性湿疹の悪化、水虫、虫刺され、強い紫外線による日焼け。そして、エアコンによる肌の乾燥など、季節を問わないトラブルもあります。
汗をかいて代謝が良くなる反面、皮膚のケアが一番大変な時期でもあります。
また、汗においては、皮膚トラブルのみならず、「におい」も気になる方が多いと思います。消臭グッズやコロンなどの汗対策製品もよく目にする時期です。しかしながら、香りの好みには個人差もあり、人によってはキツく感じられたりして、不快感を与えたりすることも少なくありません。加えて、汗臭とともに気になるのが「加齢臭」です。青臭さと脂臭い独特の匂いを放ちます。中年以降、40代くらいから急激に生成される「ノネナール」という成分が原因であることがわかっています。コロンなどで対策しても、コロンの香りと加齢臭が混じりあった、これまた独特な匂いを放ってしまう場合もあります。残念なことに、中年以降は知覚センサーも衰えてくるため、自分自身の匂いがわかりにくくなっており、自分では丈夫だと思っていても、若い人達には不快な思いをさせているかもしれません。
汗の刺激による皮膚トラブルであれば、こまめにシャワーなどで汗を流すことでケアすることができますが、毛穴につまっている老廃物や臭いの成分を流すことはできません。日中、パウダーやスプレーなどで汗や臭いを抑えたりしていればなお更、一日のおわりには、酸化した消臭剤の成分も毛穴に溜ります。
夏はついつい、シャワーだけで済ませてしまいがちですが、毎晩のお風呂タイムで湯船につかることで、毛穴の汚れをじんわり取り除くことができます。健康で美しい肌の維持にはもちろん、汗臭や加齢臭対策には最も効果的です。
「正しいお風呂の入り方」にも明記していますが、特に夏は水分補給とお湯の温度に気を付けてください。毛穴の汚れを取り除いたり、身体の深部まで温めるには5分以上は湯船に浸かることが望ましいので、「少しぬるいかな?」と感じるくらいの湯温(39度~41℃が目安)に設定してください。必ず、入浴前後にコップ一杯のお水を飲むことも忘れないでください。
また、夏のお風呂をより効果的に楽しめるよう、季節の入浴剤なども取り入れてはいかがでしょうか。6月はどくだみ湯(あせも、しっしん、水虫などに効果的)、7月は桃湯(消炎、解熱、引きしめ、日焼け、あせも、しっしん、虫さされ)、8月は薄荷湯(夏バテ回復、冷房の冷え、疲労回復)。特に薄荷(ミント)は、清涼感があり、入浴後の発汗が少なく、汗がさっと引くため、夏のお風呂に最適です。
そして、暑い時期に忘れがちなのがお風呂上りの身体の「保湿」です。湿度もあり、汗もかくので肌は潤っているように感じますが、紫外線や冷房によりダメージを受けていますので、特に顔や手足などの露出している部分には保湿を心がけてください。
文:漆畑 修(Dr.ウル)
宇野皮膚科医院 院長。東邦大学客員教授。皮膚科専門医、温泉療法医、サプリメントアドバイザー。The Best Doctors in Japan (2010―2017)。専門は皮膚科学、特にヘルペス感染症、アレルギー性皮膚疾患、美容皮膚科学、臨床免疫学、臨床栄養学。
〉関連情報
「美しくなる入浴術 ~お風呂と温泉で心・からだ・素肌をきれいにする~」
漆畑 修(著) : メディカルトリビューン社刊(2013年12月)