引き続き「我慢」と「覚悟」で
困難に立ち向かう辛丑の1年
干支でいう「辛丑(かのと・うし)」の新しい年(令和3年)が明けてから3週間。新年早々に首都圏の知事たちが「緊急事態宣言」の再発令に駆け回るなど、多くの不安は残されたままで、いつものお正月気分とはほど遠く、身の引き締まる思いがする。猛威を振るう新型コロナウイルスの感染急拡大で医療崩壊の危機が迫っている中、皆さんはどんな気持ちで新しい年を迎えられたのだろうか。東京都など首都圏の1都3県ばかりでなく、対象地域に、大阪などの関西3府県、愛知、岐阜の東海2県、それに福岡と栃木のあわせて7つの府県を追加するなど、引き続き感染状況が気掛かりだが、年が改まっても「我慢」と「覚悟」は常に肝に銘じて困難に立ち向かわなくてはならない辛い1年になるだろう。
菅政権、後手に回ったコロナ対策で支持率急降下
ところで、国語辞典で「失望」という言葉の意味を改めて調べてみると、「期待が外れてがっかりすること」や「ある人の能力・言動が、事前に思っていたよりも低かったと分かってがっかりすること」と記されている。また、「失望」という表現には、「将来に対する希望を失うこと」「これから先の望みを失うこと」といった意味合いもあるようだ。
では、最初から期待もしていなかった人が、案の定、その通りになってしまったという絶望的な人のことは、どう表現したらいいのだろうか。毎日新聞が実施した直近の全国世論調査によると、菅内閣の支持率は33%で、2020年12月12日に行った前回調査の40%から7ポイントも下落したという。また、不支持率は57%(前回49%)で、体調不良を理由に辞任した安倍政権を引き継いで、昨年9月の菅政権発足直後の調査では64%だった支持率は、前回に続いて急降下。危機ラインといわれる20%台の突入も時間の問題だ。
不支持率の理由をみると、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、政府が発令した緊急事態宣言について、どう思うか聞いたところ、「遅すぎる」との回答が71%にのぼり、「妥当だ」の18%を大きく上回ったという。また、宣言の対象については、「全国に広げるべきだ」との答えが50%で、「全国に広げる必要はない」は42%。「わからない」は8%と意見が分かれたものの、国民は菅政権の宣言発令が「後手に回った」と厳しい見方をしている。
さらに、菅政権の新型コロナ対策についての質問では、「評価する」はわずか15%(前回14%)で、「評価しない」は66%(同62%)と、極めて低い評価が続いている。また、首相は記者会見などで、不要不急の外出自粛やテレワークを7割にすることなどを呼びかけているが、首相のメッセージが国民に伝わっていると思うかを尋ねると「伝わっている」は19%にとどまり、「伝わっていない」の80%を大きく下回っていることもわかった。
発信力不足で国民に伝わらない危機感
それも道理、菅首相は演壇に立っても常にうつむき加減で、官邸のスタッフが予め用意した資料を読み上げるようでは、一国のリーダーとして頼りなく思えるのは無理もない。それでは危機感は伝わらず、発信力不足を感じている人が多いのは当然だろう。しかも、緊急の記者会見では質問するために多くの記者が手を挙げているにもかかわらず、忖度する司会が「次の日程がある」との理由で、途中で打ち切ったり、2月7日を期限と定めた宣言を「延長する場合は?」と聞かれても「仮定の質問には答えられない」などと口癖のように繰り返しているようでは説得力に欠ける。
冷たいようだが、「リーダーとしての資格はなし」と思わざるを得ない。企業の経営トップに例えれば、基本となるべきことは、自らが行い人任せにしないし、重要なことは必ず自ら決断する。そして最終責任はすべて自分にあることを自覚したうえで内外に発信する。もちろん、政策の細かいことまでは一人ではできないが、菅首相の場合は自分の考えよりもブレーンの意見を鵜呑みしているようにも見受けられる。リーダーとして決断力に欠けているのが不満でもあり不安の声も多いようだ。時のリーダーの言動が信じられなければ、危機のトンネルの出口に向かって一歩一歩進んでいるという実感が持てない。
「やる気を出せばできる」のがせめてもの救いに
ただ、一部で待望のコロナワクチン接種を開始した国もあるとはいえ、新しい異変ウイルスも確認されており、菅政権を批判していても感染拡大に歯止めがかかるわけではないことも事実。 国が中途半端なコロナ対策を示す以上、不本意ながらまずは自分なりに考えて自分で身を守るしかないだろう。もちろん、誤解のないように社会保障などの公的サービスに頼らず自分一人で頑張って生きていくという意味ではないことを付け加えておく。
日本で新型コロナの感染者が確認されてから1年が経過したが、このコラムでも口が酸っぱくなるほどに訴えてきた不要不急の外出自粛に、「3密」を避けてマスク、うがい、手の消毒などを徹底して、治療薬、ワクチンと安定した医療体制が整いコロナの嵐が静まるまでじっと我慢するほかに決め手が見当たらないのは残念でならない。最後に、東京に緊急事態宣言が発令されてから10日目になる日曜日(1月17日)の昼前、所用で銀座通りをマイカーで通過したところ、まるで“戒厳令”下のように静まり返っていた光景に接し、「やる気を出せばできる」という、わずかながら希望を見出す力が生まれたのがせめてもの救いである。
ふく☆ぺん
駿河堂MaG編集部 編集顧問