第4次安倍改造内閣と図柄入りご当地ナンバー
発足直後に支持率が低下した”全員野球内閣”
最近、「腑に落ちない」というべきなのか、かねてから納得できないと思っていることで、それが「なるほど」と頷けるニュースが目に止まり、自分と同じような見方や考え方を持つ人が少なからず存在するようでほっとしている。
10月初旬、自民党役員人事と第4次安倍改造内閣が発足した直後に全国紙が世論調査を実施した。このうち、日経新聞の10月4日付朝刊によると、内閣支持率は9月調査時点から5ポイント低下して50%になり、その顔ぶれについても「評価しない」が44%と過半数近くに及んで、「評価する」の28%を大きく上回った。しかも、不支持の理由では「人柄が信頼できない」が48%と最も多かったという。読売や毎日などの世論調査でもほぼ同様の回答結果だった。
歴代内閣の例をみると改造直後は支持率が上がるケースが多いが、首相は”全員野球内閣”を高らかに謳ってはみたものの政権浮揚にはつながらなかったようだ。不人気で空気も読めないリーダーが多くの課題を抱えてこの先も国政をかじ取りできるかは疑問だが、同じように釈然としないと思っている人が多数いるだけでもせめてもの報いである。
図柄ナンバー1番人気は”カープ愛”の「福山」
内閣支持率の話はともかく、10月から交付が始まった自動車のナンバープレートに地域の特産物や風景などを描いたイラストの図柄入りの「ご当地ナンバー」についても「なるほど」と頷けることがある。図柄の入ったご当地ナンバーは、国土交通省の肝いりで全国の自治体に呼びかけ、名乗りを上げた41地域で導入された。もちろん、取り付けるには費用がかかる。普通・軽自動車のモノトーンで7300円。フルカラーのプレートはそれに1000円以上の寄付金を支払う。寄付金については、観光振興や交通環境整備などに活用されるそうだ。
その図柄入りナンバーだが、10月1日の交付時点での申し込み状況をみると、”郷土愛”についての温度差が極端に違いすぎるのが興味深い。例えば、全国トップは広島県の「福山」で、広島東洋カープの「カープ坊や」と球団のサイン入りボールがあしらわれたデザインで2532件。2位は「くまモン」の「熊本」で1329件の応募があったという。偶然にも広島カープがセ・リーグ優勝を決めた翌日、取材で広島を訪れたが、空港や県内のいたるところに「祝・セ・リーグ3連覇」の垂れ幕や横断幕が目に付いた。その夜、「MAZDA・ZOOM-ZOOMスタジアム広島」でヤクルトとの試合を観戦したが、3塁側の内外野席も球場全体がシンボルカラーの「赤、赤、赤・・・」に染め上がって熱狂的な”カープ愛”にはただ圧倒されるばかりだった。
全国ワースト1位は「世田谷」ナンバー
一方、図柄入りナンバーの全国ワースト1位は東京都内の「世田谷」で、事前申し込み件数はわずか15件。2位も都内の「杉並」で22件だったという。私自身、生まれも育ちも生粋の世田谷っ子だが、それが定員50人の区会議員数にも満たないとは実に情けない。区の人口は90万人を超え、世帯数も48万に迫る大所帯であり、マイカーの保有台数はざっと20万台。もっとも、図柄入りナンバーの希望者が極端に少ないのはマイカーを所有する区民の一人としても「なるほど」と合点がいく。
図柄は区民の投票で決めた多摩川と区の花の「サギソウ」だが、そのデザインが気に入らないわけでもなさそうだ。世田谷区では4年前、「ご当地ナンバー」の導入に対し、多くの住民の反対を押し切ってこれまでの「品川」から「世田谷」に変更した経緯がある。これも価値観の違いだろうが、元人気力士などが出演しテレビCMを頻繁に流す某健康食品会社のイメージが強烈で、違和感を覚える人も少なくない。
長年愛着のある「品川」ナンバーのまま愛車を所有しているマイカー族などは「世田谷」に変更しないと図柄入りプレートを取り付けることができないことも不人気の理由とみられる。世田谷の地域には広大な緑地公園や美術館などの文化施設、近代的なショッピングセンターや老舗が軒を連ねる商店街も多く、道幅が狭い道路を除くと住宅地としても老若男女問わず暮らしやすい街ではある。だが、いくら郷土愛があってもマイカーにご当地ナンバーを取り付けたからといって果たして満足感が得られるものだろうか。支持が得られないのは当然だと私は思っている。
ふく☆ぺん
駿河堂MaG編集部 編集顧問