世界で死者100万人超
コロナ予防対策、もう一度、気合いを入れ直そう
「二兎を追う者は一兎をも得ず」――。言い尽くされた西洋のことわざだが、4連休(シルバーウイーク)が過ぎたところで、もう一度、新型コロナウイルス感染症の予防対策について、気合を入れ直してみてはどうだろうか。
全国の観光地などの4連休(9月19-22日)の人出が、8月のお盆などと比べても大幅に増えて、兵庫県の淡路島・明石海峡大橋や京都市の円山公園、それに神奈川県の箱根湯本などの行楽地は大変なにぎわいをみせていたそうだ。全日空は4日間の国内線利用客が約29万人に上り、19日と22日の搭乗率は90%を超える混雑ぶりだったという。東名や東北道などの高速道路も大渋滞。連休中、横浜から栃木県の日光方面に1泊でドライブ旅行に出かけたという友人家族も「高速道路では2時間以上もノロノロ運転が続いた」と疲れ切った表情で話してくれたほど。老舗旅館の女将さんの微笑む顔が目に浮かぶ。
経済活動との両立は至難の業
日本経済に活力を取り戻そうと、9月16日に発足した新政権の菅義偉首相のキモ入りで、安倍内閣の官房長官時代に見切り発車で始まった観光支援事業「Go Toトラベル」の割引対象に10月1日から東京都を発着する旅行も加える予定で準備を進めているという。すでに、プロ野球やイベントの入場制限を大幅に緩和。東京23区内の酒類を提供する飲食店やカラオケ店では午後10時までの営業短縮要請も解除されて、新宿や渋谷などの繁華街は深夜の人通りが再び目立つようになってきた。
そこで、あの非常事態宣言で「新しい生活様式」に切り替えた頃からの記憶を改めて思い出してほしい。認知症のテストではないが、その非常事態宣言にしても発令された日を正確に覚えている人がどれくらいいるのだろうか。マスクや消毒液が店頭から消えたのはいつ頃からなのか。新型コロナによる肺炎が原因で、人気タレントの志村けんさんが亡くなった日はいつだったのか。また、東京湾のレインボーブリッジが真っ赤に点灯されて「東京アラート」が発令された日は・・・・、わずか半年足らずの出来事だが、もう頭の中では遠い過去になって、コロナ前の日常に戻っている人も少なくないだろう。
そもそもコロナ感染症の拡大防止と経済活動を両立されるという考え方自体に無理があり、至難の業でもある。それを政府は感染拡大を強く警戒する医療関係者などの慎重な意見を横目に、経済回復に軸足を置くための緩和を続けているのである。9月29日現在、日本の感染者は8万3000人強、死者は1581人だが、世界に目を向ければ、感染者は3300万人、死者は100万人を突破して再び拡大している。
新たな日常の中で「命の大切さ」と向き合う
それはそれとして、“ステイホーム”の日々が長く続いているからではないだろうが、普段ほとんど考えないようにしている「命の大切さ」に目を向ける機会が多くなった。メディアからも「本日PCR検査で確認された感染者数は○○人、このうち。重症者は△△人、死者は◇人」と、日々の天気予報のニュースと同様に流れる。また、東京都では、ピークを過ぎたとの楽観的な見方もあるが、それでもマスク姿の都知事が記者会見で「『3密』を避けて感染防止対策を徹底してください」と毎日のように都民に呼びかけている。
菅新政権の最優先課題の感染症対策と経済活動の両立は避けて通れないようだが、ワクチンがなくても観光旅行やスポーツ観戦、各種イベントを開いても大丈夫だと錯覚するような空気は広がりつつある。この秋から冬にかけてインフルエンザの流行も重なり感染の再拡大も懸念される。不安は少しも解消されたわけではない。新たな日常の中で尊い命と向き合う時間が、これまで以上に増えることも覚悟しておく必要があるだろう。
ふく☆ぺん
駿河堂MaG編集部 編集顧問