女性伝統工芸士をサポート「讃の会」10年の活動に幕
今の世の中、デジタル全盛時代に突入し、これまで人間の技によって生み出されたモノづくりが瞬く間にデジタルに置き換わった。コンピュータによるデジタル化は寸法が狂わないなどの面で“有能”ではあるが、何もかもすべてを表現できるほどの“万能”ではないことも事実。そんな中で、どんなに有能なデジタル制御でも太刀打ち出来ないのが古来から受け継がれてきた匠の技術によって作り出される伝統工芸品の数々である。
現在、日本には、国が指定する伝統工芸品の産地が全国で210地域ほどある。例えば、織る(西陣織)、染める(東京手描友禅)、絞る(京鹿の子絞)、焼く(伊万里・有田焼)、塗る(山中漆器)など、それぞれの工芸品を歳月をかけて磨き込まれ、受け継がれてきた匠の技を守る国家認定資格の「伝統工芸士」は約4600人にのぼるが、このうち、女性の伝統工芸士は560人余りという。
そんな伝統工芸の世界に新風を吹き込む女性伝統工芸士ばかり17人で構成する「グループ匠美 takumi」を社会貢献の一環としてサポートするのが「讃の会(さんのかい)」という伝統工芸に造詣が深い有志たちの集まり。2002年3月に発足してから冒険心あふれる女性伝統工芸士との交流を通じ、イベントの開催など様々な支援活動を続けてきた。だが、讃の会には、現在200人ほどの会員を抱えているが、高齢化とともに退会者も多く財政面などでもこれ以上継続するのが難しくなってきたという。
この会の世話人を務めるエステテックサロンを全国展開するTBCの創業者・小暮元一郎元会長の克代夫人は「ちょうど10周年を迎え,1つの区切りとして会の活動に幕をおろすことになりました」と、残念そうに語る。
「女性伝統工芸士のみなさんは、一国一城の主ですが、伝統の精神を大切にし、素晴らしい技術技法の研鑚に励み、女性として母としてそれぞれの立場から伝統の技を、絶やすことなく後世に伝えてこられた苦労を重ねた人たちばかりです」と小暮克代さん。
続けて「これまで活動を通じてお付き合いをさせて頂いている中で、親睦をはかり、交流を深めることで、職人同士が知恵を絞り文化を守り育てる伝統工芸の世界に少なからず風穴を開けて、活性化を図るお手伝いができたのではないかと思います」と、これまでの支援活動の思い出を振り返る。
この10月17日から22日までの6日間、東京・港区の女性就業支援センターで「第8回・暮らしを彩る女性伝統工芸士展」が開催された。「讃の会」としては最後の展示会となった。
期間中、「マザーネイチャークラフト物語」とのタイトルで、会場では「グループ匠美 takumi」のメンバーが生み出した作品を展示・販売したほか、すべて手描きで大島紬をデザインする「本場大島紬」の女性伝統工芸士の田中イサ子さんをはじめ、今回出展した12人の女性伝統工芸士による「ミニ講座」や「体験コーナー」も同時に開催された。
「第8回・暮らしを彩る女性伝統工芸士展」の出展者(50音順、敬称略)
» 青木妙子(伊万里・有田焼=佐賀)
» 井上あき子(博多人形=福岡)
» 上田環江(東京手描友禅=東京)
» 大河内美登里(東京手描友禅=東京)
» 大下香苑(山中漆器=石川)
» 梶 操(京くみひも=京都)
» 川本和代(京鹿の子絞=京都)
» 下司喜三子(京繍(きょうぬい)=京都)
» 小玉紫泉(西陣織=京都)
» 田中イサ子(本場大島紬=奄美)
» 中里由美子(三川内(みかわち)焼=長崎)
» 吉川千代子(波佐見(はさみ)焼=長崎)
インタビュー・文:福田 俊之
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グループ匠美 Takumi:https://sites.google.com/site/grouptakumi/