下北沢から全国区へ
R29ニックンロール代表 島田篤志さんを直撃
「“ロックンロール”は音楽ですが、では、“ニックンロール”は何でしょうか?」
売れっ子のジャーナリスト・池上彰さんなら、「いい質問ですねぇ」と、お馴染みの言葉が飛び出しそうだが、答えは単純明快。ロールはロールでも「ニックンロール」のジャンルは食べ物なのです。もっともっと、分かりやすく解説すれば、炊き込みご飯を、特製醤油に漬け込んだ豚肉で包み、それを備長炭で焼き上げた新感覚の肉巻き焼おにぎりのこと。
その一風変ったおにぎりを発案し、ファーストフード業界に新風を巻き起こしているのがR29ニックンロール代表の島田篤志さん。東京エリアでも人気の高いタウンスポットの下北沢に本店を構え、今や渋谷、原宿、六本木、新宿歌舞伎町にも出店。今後は「全国各地の特産物を食材にアレンジした “ご当地ニックンロール” を作って、ネットワークの輪を広げたい」と意欲満々。
そこで今回の “フードビジネス探検隊” は「ニックンロール」の発信基地・下北沢本店で、ファーストフード業界の風雲児・島田篤志さんを直撃インタビュー。下北沢の街にこだわった理由や今後の事業展開などをうかがってみました。(聞き手・高桑隆・日本フードサービスブレイン代表)
民家の軒先を間借りして下北沢に1号店
高桑 まず、下北沢で始めたきっかけはどんなことからですか。
島田 ニックンロールというレシピのほうが、先に出来上がっていたので、あとは出店するための立地をどこにするのかを探していたところ、知人の紹介でこの場所(下北沢)を見つけることができました。
高桑 下北沢は「下北(シモキタ)」の愛称で知られ、老若男女を問わず、幅広い層に親しまれている。都心と郊外が交差する街、昼と夜の2つの顔を持つ街として東京エリアでも吉祥寺や自由が丘とともに、超人気の高い商業スポットですね。
島田 ワンハンドで気軽に食べられるという商品の特性からサラリーマン街よりも若者が多い街にターゲットを絞っていましたから、下北沢はドンピシャリと当てはまりました。
高桑 それにしても、店舗のスペースは狭いですね。
島田 大家さんが住まれている一般の民家の軒先を間借りさせてもらっており、店の面積は約3坪ほど、席数もご覧のとおりの4席です。テークアウトのお客様が多いので、スペース的にも問題はありません。それに、商品自体は別の場所にあるセントラルキッチンで作っているために、ここでは温める程度で最初から仕込んだり、いちいち調理する手間もいらないわけです。
デパートの催事で2300個も売りまくる
高桑 ニックンロールは日にどのくらい売れているんですか。
島田 1日平均すると300個は売れています。土曜や日曜休日はもっと多いし、場所柄、近くにライブハウスや劇場などがあって、イベント開催中にはケータリングサービスも行っているので、大量に注文を受けることもしばしばあります。イベントといえば、以前、池袋の西武百貨店で企画したグルメ関係の催事に呼ばれたことがあったんですが、その時は1日に2300個も売れたんです。
高桑 それはすごいですね。人気の秘訣はなんでしょうか。
島田 一番はお米へのこだわりですね。日本人といえば、“おにぎり” ですが、コンビニや専門店にあるようなおにぎりだと平凡で面白くない。また、宮崎県のご当地グルメとして知られる「肉巻きごはん」のような普通の白いお米を食べていると、途中で飽きちゃいますよね。そこで、ニックンロールは、お米自体にもしっかり味付けした炊き込みご飯を中に入れて肉を巻いています。また、肉の味付けにもご年配の方でも安心して食べられるように薄く甘辛い味付けにしています。
“ご当地ニックンロール”を試作中
高桑 ニックンロールというネーミングもインパクトが強いですね。
島田 音楽の「ロックンロール」と肉巻きの「ロール」のダブルミーニング。僕自身は阿波踊りで有名な徳島県出身ですが、下北沢の街にふさわしいネームになったと思っています。
高桑 これからの事業展開を教えてください。
島田 現在、下北沢本店を含めて、都内で5店舗。フランチャイズ方式で出店中です。季節限定などメニューのバリエーションも増えてきましたが、将来的には、全国各地にある特産物をトッピングの食材として使って、下北沢発のニックンロールをアレンジした “ご当地ニックンロール” を作ってみたいですね。
高桑 それは面白い。北海道に行けば、ホタテや蟹のニックンロールが食べられそうですね。楽しみにしています。
インタビュー:高桑 隆(日本フードサービスブレイン代表)
「お米は、これからの新商品開発にとって非常に重要な食材なのです。その理由は、非常にベーシックな基礎食材だからです。商品開発で重要な基礎的な条件が満たされてる食材なのです。
1〉誰にでもなじみのある、いつも食べている食材であること
2〉何処にでもある食材だから、非常に価格が安定していること
3〉どちらかと言うと、量もかなりの量が確保できること
4〉味が淡白なので、トッピングやアレンジがしやすいこと
なのです。 ヒットさせるためには、これだけでは駄目で、あとは凄い優れた知恵=アイデアを付加して、皆がビックリするようなメニューを生みだすことですが、これが一番難しい。難しいから、奇抜なアイデアが飛び出すことが多いのですが、ただの奇抜さだけでは、すぐに廃れてしまいます。こう言う商品が、多かったですよね・・。思いだしてください。一般消費者が見る目線と、我々プロコンサルが見る目線とはかなり違うと思いますが、この肉巻きおにぎり風は、結構いけるかも・・と感じましたが、1年後、改めて行ってみないと成果は分かりませんね・・。
でも、商品の狙っている立地が、この商品にばっちり適合しているので、ここでは大いに売れているようです。ぜひ頑張ってほしいと思います」
〉関連情報
R29 ニックンロール:http://nikkunroll.com