各地で大人気の農家レストラン
農家レストランが、大人気である。
農家レストランが、どんなもので、どんなお店なのか?そんなことはお構いなく、人気が先行する形で、いつのまにか世間に定着してしまった。最初の本格的農家レストランは、1991年(平成3年)に九州大分の大山農協が始めた、「木の花ガルテン」に併設されたブッフェ(バイキング式)レストランである。暫くのち、自然食バイキングレストランとして、大ブームを巻き起こした。
農家レストランの呼称が登場するのは、2006年(平成18年)出版された、農文協(農村漁村文化協会、東京港区赤坂)の増刊現代農業「畑カフェ・田んぼレストラン」ではないだろうか。農文協の増刊現代農業シリーズには、随分触発された。
我国でいち早く、農産物直売所の盛況を取り上げたのものこのシリーズ、若者や中高年、団塊世代の帰農ブームを取り上げたのもこの増刊シリーズである。筆者も増刊シリーズを拝読し、農業ビジネスの大変化に気付き、様々な農業関係の繁盛レポートを書いた。そんな中で登場してきたのが、農家レストランである。
ところが、これらの繁盛している農家レストランに取材に行き、運営者や経営責任者の最後の一言が気にかかった。
“お客様はいっぱいなのですが、あんまり儲からないのですよ・・”
農家レストランは本来、都会の消費者の「食」に対する強い安全・安心の欲求を満たし、新鮮野菜や地元で採れる山菜などを利用した、健康で安心な食のレストランとして、幸せを届けるレストランのはずだ。一方、農村経済を低迷させてきた、野菜価格の下落による出荷調整、間引きや規格外品として捨てられる廃棄農産物。これらを捨てずに生かし、地野菜などを調理して、特産品として商品化する農家レストラン。食育活動の推進、農村の雇用創出、こうした地域活性化の、地産・地消の大きな役割を果たしている中核的存在の農家レストランが、“儲からない・・” “運営経費も出ない・・” という厳しい現実はどうしてなのか。何が原因なのか・・?
筆者は、飲食業の経営コンサルタントという仕事柄、“よし!この現実をなんとかせなにゃあかん!” と思いつき、飲食店経営の立場から「幸せレストラン 農家レストラン」(2010年4月、同友館刊)の発刊に至ったのである。
農家レストランは、本来、幸せレストランでなければならない。しかし現状 “儲からない・・”、“利益が出ない・・” という、不幸せなレストランになっている。この原因を探り、その改善の処方箋を記述しているのが本書で、是非経営改善にお役立て願いたい。その結果、農家レストランが、本当に幸せを呼ぶレストランとして、輝かしい未来に羽ばたくことを祈念している。
文:高桑 隆
(有)日本フードサービスブレイン 代表取締役。飲食店経営指導専門、飲食店の売上向上対策、農家レストラン開業指導、具体的で効果的な指導を実施。この分野では、経験豊富なコンサルタント。
〉関連情報
『幸せレストラン 農家レストラン』
http://www.doyukan.co.jp/store/item_046865.html