お風呂で全身エステ ~春のおふろ~
現代の社会生活では、季節を問わず、室内は空調が効いており、湿度が低くなっています。快適ではありますが、肌にとっては乾燥しやすく、注意が必要です。
加えて春の時期は、花粉や紫外線の刺激で、皮膚の赤みやかゆみが起こりやすくなります。
また、「季節の変わり目」でもあるこの時期は、暖かくなり心身ともにウキウキと活動的になる反面、肌トラブルも多く、持病などが悪化する時期でもあります。目には見えませんが、私たちの身体は、冬から夏へと身体を順応させるため、「自律神経」がフル回転しています。冬眠から覚めようとしているような状態ですので、様々な外的要因にうまく対応できず、疲れやすくなっているのです。
季節的に暖かくもなってきて、疲れていたりすると、「シャワー」だけで済ませてしまいがちになっていませんでしょうか。
「お風呂(入浴)」は、お湯をためたり湯船を掃除したりする手間はありますが、身体・心・素肌をきれいにする素晴らしい力を持っています。春に多い肌トラブルや疲れも、まとめて癒してくれる、便利なホームケアの一つなのです。
特に、スキンケアにおいては、「全身エステ」を家で毎日手軽にできるので、素肌の健康維持や、エイジングケアにはうってつけです。
シャワーのほうが、皮膚の汚れは洗い流しやすいのでは?と思われがちですが、実はお風呂に入った方が、皮膚に負担をかけずに汚れをきれいに落とすことができます。
皮膚の表面に付着する自分の汗や脂、衣類の糊や染料、洗剤の成分、一日の終わりには、汗と大気中のホコリなどの汚れ、化粧品、はがれ落ちた角質や皮脂などが混ざって毛穴に溜りますが、お湯に浸かるだけで、皮膚の表面や毛穴の汚れの6割をきれいに落とすことができます。ゴシゴシこすらない「つけ置き洗い」です。
また、入浴によって内臓まで温められることで、自律神経の働きが整えられますので、季節の変わり目には最適です。シャワーには皮膚の表面を刺激する効果はありますが、身体の深部まで温めることはできません。更に、お風呂ならではの「浮力」や「水圧」によって、生体活性効果が生じ、全身の血流もスムーズになり、新陳代謝が活発になって疲労回復効果が期待できます。
毎日の生活サイクルの中に、顔を洗ったり、歯を磨いたりするのと同じように、お風呂に浸かることを取り入れてみてはいかがでしょうか。
近頃は入浴剤の種類も豊富で、手軽に自宅のお風呂が有名な温泉に変身します。季節毎の入浴剤もあり、春は蓬湯(よもぎ・三月)、桜湯(四月)、菖蒲湯(しょうぶ・五月)といった伝統的なお風呂を楽しむこともできます。
多忙な生活の中でも、日本の四季や伝統を感じながら、一日の汚れをやさしく落とし、疲れをじんわりと癒してください。
文:漆畑 修(Dr.ウル)
宇野皮膚科医院 院長。東邦大学客員教授。皮膚科専門医、温泉療法医、サプリメントアドバイザー。The Best Doctors in Japan (2010―2017)。専門は皮膚科学、特にヘルペス感染症、アレルギー性皮膚疾患、美容皮膚科学、臨床免疫学、臨床栄養学。
〉関連情報
「美しくなる入浴術 ~お風呂と温泉で心・からだ・素肌をきれいにする~」
漆畑 修(著) : メディカルトリビューン社刊(2013年12月)