着物の極意 ~着物用の下着ってどうなってるの~
この夏、浴衣を着られた方も多いかと思います。
「浴衣セット」などで下着となる肌襦袢や、腰ひもなどの小物付きの仕立て上がりで購入された方、あるいは仕立てた方もいらっしゃるでしょう。
浴衣を着た経験のある方は、既にご存じの通り、手軽に着られる浴衣でも、着物と帯だけでは着られないことがわかります。洋服と同様、着物と自分に合った下着と小物類が必要です。
更に、楽にきれいに着るために、機能性に優れた小物類や、個人の体形を考慮した補正下着などもあります。
「最初から知っていたら、楽にきれいに着られたのに・・・・」
着物を着た時に、苦しかったり、暑かったり、紐の部分が痛かったり、着崩れたりという経験が多かれ少なかれあるのではないでしょうか。
着物の着付けにおいて、着物自体の着方や帯結びは、一般に広くレクチャーされていますが、下着や小物選び、その使用方法についての説明は極端に少ないのが現状です。呉服屋さんでも、下着や小物揃えはそれほど多くなく、「便利な」ものはネット上に豊富に見うけられますが、どれがどう便利なのかは、実は試してみないとわかりません。しかしながら着物は日常着ではない上に、小物類のお値段もそれなりにしますので、そうそう試せるものでもありません。
「どうして着物を購入する時に、教えてくれないの?」
どうしてなのでしょうね。着物を最初から楽にきれいに着られたら、着物を好きになってくれるかもしれないのに、面倒で窮屈なイメージばかりが残ってしまうのは残念なことです。洋服をきれいに楽に着こなすために、下着でボディを整えるのと同様、着物も下着や小物が肝心です。
「ずん胴」こそ着物の美
女性の美容、特に体型においては、メリハリボディが理想かもしれませんが、着物の理想は「ずん胴」です。洋服とは真逆の体型と言えます。洋服は立体的ですが、着物は平面と直線でできていますので、シワなくすっきりと着こなすには、でっぱりやくぼみは邪魔になってしまいます。
着付けをしてもらった経験のある方はご存じだと思いますが、胴部分にタオルなどで「補正」することで、凸凹を平らにするのが一般的です。
また、着物を着た時の動きによって、窮屈なところ、痛いところ、着崩れやすいところなどを知った上での補正も、着やすさにつながります。
ですので、最初に自分の体型を把握し、ずん胴になるよう補正してみて、実際に着て動いてみることが必要になります。
しかしながら、自分で補正をするのは面倒ですし、時間もかかり・・・・考えるよりもとても大変なことです。着物を廃れさせる3Kのひとつ、「着付け」の帯結びと同じくらいに大きな問題だと思います。この補正の問題を解決してくれるのが、便利な下着と小物たちです。この存在を最初から知ることで、着物の着やすさと好感度は、ぐっと向上するのではないかと思います。
百聞は一見にしかず、画像で説明してまいります。
今回は、浴衣で図説しておりますが、寒くないうちは、ふだんの遊び着としての着物にもそのまま応用できます。
①ブラと一体型のスリップ。足からはけますので、髪型やメイクを邪魔しません。 *バストが気になる場合は、ノンワイヤーのスポーツブラなどで整えてからでも。 胴の部分は、伊達締め・帯板・帯が巻かれて、自然に厚みが出ますので、下着はすっきりとしています。 *背中から腰・ヒップにかけて差があり、帯が安定しない場合は、補正ベルトなどが役に立ちます。補正箇所にパッドを入れて調整します。 |
②さて、浴衣を着てまいりましょう。 腰紐・伊達締め・着付けベルトを使います。 腰紐・伊達締めには、シャーリングゴム部分があるのがお奨めです。体の動きに対応し、紐の食い込みを軽減してくれます。 着付けベルト・・・って何?こちらはなくても着られますが、胸元の襟あわせ部分を固定し、着崩れを防いでくれますので大変優れた小物のひとつです。紐部分はゴムですので、動きに対応します。 |
③できるだけシワなく、左前になるように合わせて腰紐をしめます。 結び目は、横にくるほうがすっきりします。 |
④着付けベルトを使って、胸元を合わせていきます。 まず、襟をどれくらい「抜く」のかを決めて、襟を合わせます。髪形にもよりますが、例えばアップにしたおだんごが下部分にある場合など、おだんごにぶつからないように襟を多めに抜くといった風に。 合わせた襟の左下からベルトのクリップではさみ、背中をぐるっと通して、右下で襟をはさみます。ベルトの位置は、帯に隠れる部分です。 おはしょり部分を整え、背中のシワをのばします。 |
⑤伊達締めをしめます。 既にベルトで襟合わせが完成していますので、しめやすくなっています。 |
⑥帯板を巻きます。 帯を前で結んでから後ろに回す場合は、この帯板が便利です。 後ろもすっきり。後は帯をしめるだけです。 |
⑦帯を結びます。(今回は二色使いの半幅帯を使用) 半幅帯の結び方は、バリエーションが豊富。垂らしてみたり、お太鼓風にしてみたり。前で結ぶので、やり直しも簡単です。 |
浴衣や遊び着を、ちょっと「よそ行き」に
少々かしこまったレストランに行くときや、それなりの年齢の方になると、「さすがに浴衣じゃ・・・」と思われることもあるかと思います。
そんな時は、便利アイテムを加えることで、「よそいき」にすることもできます。
①一見、複雑なものに見えますが、とても便利な「美容襟」と呼ばれるアイテムです。 そのままでも使用できますが、より襟の曲線を綺麗に出したい場合は、「襟芯」をはさみ込みます。 |
②スリップの上から、肩にかけます。 前と後ろに三箇所ずつ、紐を通す部分があります。まず、どれだけ襟を抜くかを決めます。上から多め、標準、少なめとなります。ここでは、一番上に紐を通し、結びました。 |
③後は先ほどと同じように浴衣を着ていきます。 |
④お太鼓風の帯結びにして、帯締めと帯留めをプラスしました。 |
足袋を履き、下駄から草履にチェンジして、「よそ行き」アレンジ完成です。

東京在住。着物着付師資格を持つ。愛猫家。自宅で猫を飼う傍ら、近隣の野良猫の保護活動に協力している。趣味はコントラクトブリッジ。
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