GW「油断は禁物」。
出没する「天邪鬼」を徹底退治せよ
「自粛疲れ」とか「我慢の限界」などとの声も聞こえてくるが、まだまだ「油断は禁物」である。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言が発令された中で「ステイホーム週間」とも呼ばれる大型連休(GW)に入り、初の週末となった土曜と日曜(4月25、26日)の交通機関は、例年のようなふるさとへの帰省や観光やレジャーを楽しむ旅行客による混雑はほとんど見られなかったという。JR各社によると、毎年、GW前半の東京駅発の下り列車は自由席の乗車率が100%を超えるほどに混雑するそうだが、外出の自粛要請によりこの週末は東北・山形新幹線の「やまびこ」や「つばさ」、上越新幹線の「Maxとき」などの車内は大半が空席のまま“見切り発車”したという。
一方、高速道路も同様で毎年GWの期間中には交通量が増大し、全国各地で激しい渋滞が発生しているが、この週末は、高速道路や首都圏の一般道路も大きな渋滞はなかったようだ。私自身、やむを得ない用事で日曜の26日午前と午後、東名高速や中央高速、関越道を結ぶ東京郊外の環状8号線をマイカーで往復したが、まるで信号機の少ない地方の道路を突っ走っているようにスムーズに流れていた。世田谷から練馬まで制限速度の60キロ前後で走行していれば、途中の赤信号で停止することもなかった。この日もお世話になった知人から頼まれた野暮用がなければ、わざわざハンドルを握ることはなかったが、対向車線を走るクルマもセダンやSUVの乗用車タイプではなく、商用車と思われる軽トラックやミニバンなどが時折すれ違う程度で閑散としていた。いつもは昼夜を問わず渋滞の激しい環状8号線だが、交差点で対向車が通り過ぎるのを待たずに右折できるほどに交通量が少ない光景は見たこともなかった。
濃厚接触「8割削減」地域に大きな差
ただ、携帯電話の位置情報などを基にNTTドコモが分析したデータによると、26日午後3時時点の全国各地の人出については、感染拡大以前(今年1月18日から2月14日の休日平均)と比べて、増減率は依然として大きなばらつきがあったという。例えば、緊急事態宣言期間の5月6日まで「いのちを守るステイホーム週間」と位置づける東京の主要地点の人出は、減少率で8割を超えたのは、東京駅(87.2%)、丸の内(85.3%)、新宿駅(81.9%)など5カ所。半面、銀座(76.9%)、霞が関(74.4%)など7地点は8割未満だったという。
また、東京以外で減少率が8割を超えたのは大阪の梅田駅(87.8%)、名古屋駅(80.9%)などで、札幌駅(73.6%)、横浜駅(78.9%)、福岡県の天神(78.3%)のほか、岐阜駅(56.0%)、大津駅(18.0%)、前橋駅(22.2%)などの地域では低い減少率にとどまったという。全世帯に布マスク2枚を配布する「アベノマスク」に多くの不良品が見つかった例を挙げるまでもなく、やることなすことが「不評」の安倍首相は、緊急事態宣言では人と人との濃厚接触「8割削減」を掲げるが、それをクリアしたのは全国各地で一部の都市部にとどまっている現状では不安がよぎる。しかも、少し気を抜けば我慢できない人が再び出歩くのは火を見るよりも明らかだ。
空港や駅、高速道路などで「検温」の“検問”実施
大型連休中に県境をまたぐ人の移動への「水際対策」としては、北海道や沖縄などの県では、空港や駅、高速道路のパーキングエリアで、サーモグラフィーや体温計で地域外からの流入者の「検問」ならぬ「検温」を実施しているそうだ。さらに、帰省などで転入してきた人に2週間の「ステイホーム」を要請している地方も増えているという。ただ、いずれも強制力はなく、水際で来訪自粛を意識してもらったり、体調管理を促したりする啓発活動の意味合いが強い。
何も手を打たないより感染防止には期待できそうだが、見えない危険を相手に、少しでも恐怖や不安から解き離れたいと願うならば、まずはGW中の遠出を思いとどまって、必要に応じて手洗い、マスクを付けながら「ステイホーム」を続けるほかにはない。世の中には、わざと人に逆らう言動をするような「天邪鬼(あまのじゃく)」という人も少なくないが、経済活動の時計の針は止まったまま、医療崩壊も現実味を帯びている有事の現状では一人一人の命を守るにもそういう”ひねくれ者”は世間から白い目でみられても致し方ないだろう。GW中に出没する天邪鬼という輩をどこまで退治できるかどうかで、この先の緊急事態発令の解除か延期かの判断に大きな影響を与えることになるだろう。
ふく☆ぺん
駿河堂MaG編集部 編集顧問