紫外線のダメージとUVケアについて
紫外線と聞いて、何を連想するでしょうか。真夏の太陽? それとも日焼けした肌?
紫外線量は、北半球では夏至のころ、6月に最も多くなります。4月ごろから増えはじめますから、5月のよく晴れた日などは要注意です。真夏の7月、8月ともなると、大なり小なり、紫外線対策をしている人が少なくありませんが、春はまだ、対策があまりとられていないだけに、紫外線の影響を強く受けやすい季節なのです。「まだ大丈夫だろう」と油断していると、そのスキをねらわれてしまいます。
紫外線は、晴れている日だけでなく、曇りや雨の日でも地上に降り注いでいます。曇りの日は晴れの日の約50%、雨の日でも20~30%は地上に到達しているだけに厄介です。晴れの日に外に1時間いるのと曇りの日に2時間いるのとでは、同じ量の紫外線を浴びることになるわけです。
同じことが、建物の中にいる場合についてもいえます。建物や車の中にも、ガラス越しに紫外線は届いています。建物の中の紫外線は屋外の1割以下といわれますが、時間が長くなれば、屋外で浴びるのと同じことです。春だから、曇っているから、建物の中にいるから、と油断していると、紫外線の影響で、皮膚はダメージを受けることになってしまうのです。
紫外線によって生じる急性のトラブルは日焼けです。日焼けは英語ではサンバーン、つまり日光による火傷(やけど)です。ひどくなると水泡を生じ、発熱したり、命にかかわることもあります。通常の日焼けなら、赤くほてったり火ぶくれになったりしますが、やがて黒ずんで皮がむけ、見た目はだんだん元の状態に戻ります。問題なのは、こうした急性のトラブルが表面上は治ったように見えても、そのダメージが長い間につみ重なって、慢性的な皮膚の障害へとつながる恐れがあることです。
例えば、しみ・しわは肌の典型的な老化現象と考えられていますが、その大きな原因が紫外線であることがわかっています。紫外線によって受けたダメージが長い間につみ重なった結果、しみ・しわとなってあらわれるのです。光老化と呼ばれています。時に皮膚がんに発展することもあるだけに、注意が必要です。
しみ・しわ、皮膚がんなどの症状は、かなりの年月がたってからでもあらわれるため、高齢になってから初めて紫外線の怖さを思い知らされることが少なくありません。また、症状のあらわれかたや皮膚がんへ結びつく度合いなどは、人種によって、また人によって大きく異なります。
仮にそういう点で同じ素質を持っているとすると、子どものころから成人するまでの間に紫外線をどのくらい浴びたかが、症状のあらわれ方や皮膚がん発症の重要なカギを握っています。要するに、子どものころから紫外線をたくさん浴びていると、それだけ皮膚の老化が早くなるのです。
紫外線量が増える季節を迎えたら、日よけ、日焼け止めが絶対に欠かせません。特に春先は、紫外線量が多い割に肌が日差しに不慣れな分、ダメージを強く受けやすいからです。
最善策は屋外に出ないことですが、日常生活のいろいろな場面を考えると、それは現実的ではありません。屋外に出るとき、しっかりと紫外線の害を防ぐ日よけをすることが不可欠です。
長袖で肌の露出を少なくし、つばの大きい帽子と日傘を使うと、かなりの部分がカバーされます。また、UVカット効果のあるサングラスで目に対する悪影響を防ぐことも忘れずに。できるだけ日陰を選んで歩くのも一つの方法です。
日焼け止め(サンスクリーン剤)も、この季節は必須アイテム。表示のSPFは、紫外線B波(UVB)をカットする力をあらわすもので、何も塗らない状態と比べて、日焼けが始まるまでの時間を何倍に延ばせるかという目安です。SPF5なら、日焼けするまでの時間を5倍に延ばせるということになります。もう一つの表示PAは、紫外線A波(UVA)をカットする力をあらわし、強い順に+++、++、+となっています。
ただし、効果が高ければそれだけ肌への刺激も強くなりますから、屋外で過ごす時間や自分の日焼けしやすさなどを考えて、適切な日焼け止めを選びましょう。日常の紫外線であれば、SPF20、PA+程度までで十分です。また、汗で流れたり、こすれて落ちることも考えて、こまめに塗りなおす必要があります。
もし日焼けをしてしまったら、炎症部分をシャワーの水などで十分に冷やし、低刺激性の化粧水などで水分を補い、乾燥を防ぎましょう。水ぶくれができたり、広範囲に炎症が起きているとき、痛みがひどいときは、皮膚科専門医を受診することです。
文:漆畑 修(Dr.ウル)
宇野皮膚科医院 院長。東邦大学客員教授。皮膚科専門医、温泉療法医、サプリメントアドバイザー。The Best Doctors in Japan (2010―2017)。専門は皮膚科学、特にヘルペス感染症、アレルギー性皮膚疾患、美容皮膚科学、臨床免疫学、臨床栄養学。